パスポートを紛失!!(掏られた)

出来事としてはけっこう前の事となるが、海外でパスポートを紛失する(スリに掏られた)という重大な局面を迎えることがあったので、その時のことを記載しておく。

掏られた場所はドイツ、フランクフルトのレーマー広場で。ドイツ自体、スリが多く、けっこう注意が必要なのだが、こういうのはふとした瞬間にやってくるものだ。この時もそうだった。その時は運悪く財布の中にパスポートを入れて歩いていた。その財布は前側に着けたウェストポーチに入れていたのだが、チャックを開けられ財布を丸ごと持っていかれてしまったのだ。

パスポートが無ければ当然帰国ができない。そのため、パスポートを失ったらすぐ日本大使館か領事館に行く必要がある。帰国にはそこで発行してもらう「帰国のための渡航書」というものが必要になる。ここで注意が必要だが、「帰国のための渡航書」は当該国から日本に帰るためだけの書類になる。経由地での出国ができないのだ。もし帰国便の経由地で入出国手続きがあるようであれば入出国はあきらめて空港内で過ごすか、経由地入出国の無いチケットを取り直すことになる。

では、この「帰国のための渡航書」をどのように手に入れるか。

1.警察で盗難証明書をもらう

2.証明写真を作成する(サイズ規定あり)

3.領事館、大使館に盗難証明書をもってゆき「帰国のための渡航書」を発給してもらう

手順としてはこれだけだが、実際にはこれがかなり大変だった。
もし貴方がツアー参加者の場合、この場合は添乗員がそれらの手配を行ってくれるのでまっていればよいだろうが、自己手配による旅行の場合はそうはいかない。
順を追って説明するが、まず手持ちの現金があるかどうかを確認して欲しい。クレジットカードではなく現金だ。これには理由がある。大使館・領事館で「帰国のための渡航書」を発行してもらうにはお金がかかる!しかもこれは現金オンリーでクレジットカードは使用できないとのこと。財布ごとパスポートを掏られてしまった私にはこれがかなりキツかった。この時はたまたま財布以外に現金を分けて保管しておりこれで何とか凌げたが、本当にギリギリだった。
また、情報ツール。これはスマホでもノートパソコンでもいいがとにかくネットと繋がるものが無いと辛い。近くの警察署がどこか、最寄の大使館・領事館はどこか、など調べなければいけない事がいくつもある。情報ツールはどこに行くにも持っていった方がいい。ツアーでなければ尚更だろう。

今回私が頼ったのは在フランクフルト日本国領事館。

メッセタワーというフランクフルトでも有数の高層ビルに入居している領事館で、入る時には荷物検査もある。お役所ってこんなところに税金を使うんだな~とふと思うような超立地のいい場所にある領事館だ。

海外にある日本公館のリストは外務省に「在外公館リスト」としてまとめられているので、もしトラブルにあった場合は参照してほしい。

では、私が辿った「帰国のための渡航書」の発行までの流れだ。

1.警察で盗難証明書をもらう

海外の警察に接すると本当に日本の警察は対応が細かいなと心底思う。掏られた日は日曜日だったので領事館がやっていない。翌日(夕刻便)が帰国便だったので少しでもさきに進めておきたいと思ったので、携帯していたノートパソコンで滞在ホテルから近くの警察署を検索。
現地の警察にいって、パスポートを盗まれたとつたない片言の英語で説明した。

駄目、全然駄目。海外の警察やる気ない・・・(この時はドイツの警察)

殺意を覚えるくらいやる気がない。英語はわからないだの、通訳つれて来いだの、ありえないでしょフランクフルト警察。マジで糞野郎だわ。というわけでこの日は撃沈。翌日領事館で帰国のための渡航書を発行してもらいたい旨を伝えた際に、この事も伝えどうしたらいいかを聞いた。近くの警察署の方が対応がいいよと教えてくれた。また、この時書類を幾つかもらい、これを記載して警察に渡しなさいと言われた。

個人情報の部分は黒く潰した。ここは自分の情報を書くところ。記載はもちろんアルファベットで。欄外の手書きは現地の警察官が書き足したもの。現場はレーマー広場だよ、というもの。

フォーマット続き。こちらは主に被害の内容について記載するもの。どこでやられたの?どのように盗られたの?何を盗られたの?など。

盗られたものの詳細を記載。ここにちゃんと書いておかないと後々保険の申請でカバーがされなくなる。

犯人の容貌などについてはわからないので記載していない。フォーマットはこの4枚で、警察の方はあまり突っ込まないで受け付けてくれる。

警察へ話すことがフォーマットになっており、それに記載すればいい形になっていた。正直これに助かった。これが無かったらまたクソ警察と無用な問答を繰り返すことになるのだろう。ともかく、ここに必要なことを記載し、警察に持っていくことで改めて盗難証明書を発行してもらうことが出来た。

盗難証明書

発行してもらった盗難証明書、これを取得するのに言語の壁はやはりあった。

盗難証明書2

盗難証明書は他にもう1頁あり、合計で3頁になっていた。

発行された盗難証明書は大切にしまっておこう。渡航書の発給だけではなくのちのち行う保険の適用でもこれは必要となる。

 

2.証明写真を作成する

パスポートと同じで証明写真が必要になる。そしてそれは領事館とかで撮ってくれない。当事者側で用意する必要があるのだが、ここは異国の地。私がパスポートを失ったドイツでは日本と同じく証明写真BOXがあるので何とか対応できるが、国によっては写真の入手は困難になるかもしれない。証明写真のサイズはパスポート提出写真と同じでサイズがW35×H45でその中に顔が規定のサイズで納まるように撮影されていないといけない。証明写真BOXはドイツでは駅構内などにあったのでこれで撮影を行って領事館に持っていった。証明写真BOXはクレジットカードが使えず現金オンリーだった。ここでも現金がないと詰んでしまう。

フランクフルトでは中央駅の構内に証明写真BOXが数機あったが、これはその土地土地により異なるので領事館なりでどこらで写真が撮れるかは聞いておいたほうがよいだろう。

 

3.「帰国のための渡航書」を発給してもらう

盗難証明書、写真が手に入ったら大使館・領事館で「帰国のための渡航書」を発行してもらおう。この時私は身分を証明するものはありますか?と聞かれたが、まずパスポートは無いし、財布と同時に免許証から保険証までごっそり取られてしまったので無いと答えるしかなかった。本来この書類の発給には戸籍謄本か住民票、又は免許証などの身分を証明するものが必要となる。しかし海外でトラブルに巻き込まれた場合に戸籍謄本や住民票を持ってるという可能性は限りなく低いだろう。免許証まで無いとなればいかんともし難い。領事館の人に現状そういうものが無いと説明すると、いくつかの質問を受け、帰国後に速やかに住民票などの身分を証明するものを送るという条件付で発給の手続きに入ってもらった。

発給は無料ではない。現金オンリーで手数料がかかる。現金が0だとここでアウトだ。私はとりあえず手数料分の金額ギリギリは残っていたのでなんとか凌ぐことができた。

帰国のための渡航書 表紙

発行してもらった「帰国のための渡航書」の表紙。折りたたみ形式となっていてパスポートと同じように査証を押すページも用意されている。この渡航書は帰国した段階で効力を失効する。

帰国のための渡航書 裏

表紙裏側。パスポートと同じように名前や出身地などの情報があるが、帰国の一回しか使用できない。また帰国以外の用途には使用できないように経由地が記載されていてそれ以外の場所には行けない様になっている。私の場合はソウル経由だったのでその旨が記載されている。

 

この日の夕方に便がでるということで領事館の人には発給を急いでやってもらえたと思う。通常は数時間かかるんですよ、とかって呟かれたが、結果よければなんとやらだ。申請は領事館が開くと同時に行い、発給がされたのが午後の3時ごろだった。数時間だが、帰国便までの時間が無ければ便を新たに予約するほか無い。これは本当に危なかった。
ともかく無事「帰国のための渡航書」を発給してもらい、領事館の人には礼を言って急ぎフランクフルト空港に向かい無事に帰国することができた。
ソウル経由の乗り継ぎ便だったが、「帰国のための渡航書」はまったくパスポートと同じ要領で、スムーズに日本の入国審査も終える事ができて日本にもどれた。

 

海外でのパスポート紛失に備える意味で

パスポートを海外では命の次に大切だ、という言い方をすることがあるが、これはある意味正しい。見知らぬ異国の地で取り残されるというのは生きた心地がしないだろう。命の危険もある。
パスポートを決して無くさない、というのは旅行の前提のようなものだが、それでも不慮の事故というものは有り得る。そして添乗員がいるツアーでの旅行ばかりではないという事を考えればパスポートの紛失とそれにともなうトラブルは決して起こりえない事ではないと思う。もしもの場合にどのような備えが必要か。

パスポートのコピーを用意しておく
ツアーなどの場合パスポートのコピーをツアー会社に提出したりするが、これは意味の無いことではない。帰国のための渡航書の発給の時に身分証明書はあるか?と聞かれたが、コピーはこれに充てる事が出来る。

現金を用意しておく
海外でカードは便利だ。クレジットカードがあれば大抵の事は済ませることができる。しかし現金オンリーのものもある。帰国のための渡航書の発給には現金が必要だ!

情報ツールを持とう
上の記事中でも記載したが、ノートやスマホなどのモバイルギアがあると情報収集が便利。今時だいたいの人は旅行に持っていっているだろうが。
在外日本公館がどこにあるか、

上記をパスポートの保管場所とは必ず別の場所に隠し持っておこう。パスポートと一緒に上のものも無くなったら意味が無い。
証明写真もネックだが、これは旅行の度に念のため写真を持っていくというのは現実的ではないだろう。

 

海外でパスポートを無くしたことで学んだこと

とにかくパスポートは大切。旅行に慣れてきた頃が危ない。無くしてみて改めてその大切さを知るということだ。今回はパスポートを失いはしたが、同時に幾つかの運も残っていた。まず領事館が近くにあったこと。発給にかかるだけの現金の持ち合わせがあったこと、そして何よりも帰国便までの時間が残されていたので当初の予約便どおりに帰れた事などだ。

もし在外公館が近くになかったら・・・
時間をかけてでも公館に向かうしかない、アメリカであればけっこうな数の在外公館があるが、ヨーロッパとかは国によってだがあって2つとかだ。マイナーな都市でパスポートを無くしたら急ぎ在外公館のある都市に移動するのがよい。

もし現金の持ち合わせが無かったら・・・
海外公館の人は貸してくれない。現金なしはけっこう手詰まりっぽい。
クレジットカードにVISAなら「PLUS」のマーク、JCBやMasterCardなら「Cirrus」のマークがあればATMから現金をキャッシングできる。これは海外、キャッシングなどのキーワードで調べれば情報がでてくるだろう。但し、クレジットのキャッシング枠を0に設定していたりするとこの機能が使えないので注意が必要だ。
時間はかかるが海外送金という方法も有る事はある。海外銀行口座をもっていなくてもできる方法としてはWU(ウエスタンユニオン)が有名だ。日本から送金をしてもらい、海外のWU取扱店舗で受け取るという方法もある(但し本人確認書類が必要なのでパスポートのコピーから免許証から一切合切失くしてしまっていると難しい)。
最悪、商品をカードで買って質屋に入れるという方法も考えられるが、これは本当に最後の最後だろう。

・もし帰国便まで発給の時間がなかったら・・・
日をずらすかなどの再手配を行う必要がある。これはクレジットとネット環境があれば比較的簡単にできるだろう。最悪クレジットカードも無かったとしても、日本にいる知人や家族に依頼してチケットの手配を行ってもらえばよい。

 

帰国したら保険の申請をしよう

だいたいの人は海外旅行の際には保険に入っていると思うが、海外で紛失(私の場合は盗難)となったものは保険でカバーされる可能性が高い。保険規約をよく読んで申請を忘れずにしよう。在外公館で支払った帰国のための渡航書の発給費用もカバーされる(私の場合)ので各種領収書は全て取っておくようにしたい。